私の転職日記~転機と転職活動の終わり~

ある面接官との出会い

気分はどん底まで落ち、転職へのやる気もほとんどおきない中でも私は転職活動を続けていました。相変わらず面接まではこぎつけるものの、内定はもらえない毎日。そんな中、あるベンチャー企業の経理事務の仕事に応募したところ書類選考が通り面接してもらえることとなりました。その時の面接官は眼鏡をかけた太った男性一人で、とても神経質な印象を受けました。第一印象であまり得意なタイプではないなと思ったのですが、その予想は当たり、非常に腹の立つタイプの人間でした。その面接官は、私に対して「どんな事務になりたいですか?」と聞いてきました。私は「この人がいてくれなければ困ると思われるような事務になりたい」と答えました。事務の仕事は覚えてしまえば誰でもできることですが、それだけではなくて気遣いや心配りのできる人間になり、誰でもいいのではなくあの人でなければダメだと言ってもらえるようになりたいという趣旨のことを話したのですが、面接官はそれに対し「それは違うと思います」というのです。答えがあるわけではなく、その人の意見を聞くことが目的の面接で、答えたことに対し「違う」と言われるのは初めての経験だったので大変驚いてしまいました。なぜだか私の答えが気に食わなかった様子のその面接官は、その後私に質問することはほとんどなく、自分の会社が如何に凄い会社かという自慢を話すようになりました。曰く「うちの社長が面接に来た大学生に対してなんていうか分かりますか?うちの会社には入らない方がいいっていうんですよ」だとか、「ベンチャー企業ってだけで好きなことやれると思って入ってくる若い人が多くて困ってます」だとか「うちの社長は30代でこの会社を立ち上げて、我々も手探りでここまでこの会社を大きくしてきました。私も経理は未経験でしたが土日も休まず勉強してここまでやれるようになったんです」という内容でした。そもそもその場には社長はおらず、社長との面識がない私に対し、なんていうか分かるかという問いは無意味ですし、解るはずもありません。そもそも面接の場で、うちの会社はやめた方がいいなんていうのは「ちょっと変わってる俺かっこいい」という勘違いからくるバカなセリフだと思いますし、さらに本人でもない面接官がそれを自慢げに私に話す意味も分かりません。段々と話を聞いている間に腹が立ってきた私は、この時間が早く終わることだけを願って上辺だけの笑顔を浮かべていたのですが、そんな私に面接官は最後にこんな言葉を言い残しました。「うちの会社に入って頂くのは構わないんですが、専門学校を卒業して前職で3年間働かれて、うちの会社に来てまたすぐ辞めちゃったら、次の会社でブレてるなって思われますよ」と。面接が終わり、帰り道を歩いている途中、私はその面接官に対する憎しみで心がいっぱいになってしまいました。何ですぐ辞める前提で話すんだとか、数々の失礼な物言いや意味不明な自慢話を思い出し、腸が煮えくり返る思いでした。

「ブレてるって思われちゃいますよ」

ムカつく面接官との面接から一日たち少し冷静になると、あの面接官の「ブレてる」という言葉が頭から離れなくなりました。確かに私は転職活動に焦るばかりに、本当にやりたい仕事がなにか、自分の夢は何だったのかという一番大切なところを忘れ、それどころか職種にも業種にもこだわらず、とりあえず就職できればいいやという思いが強くなっていたのです。その事に気付けたとき、あの面接官の色々な言葉がよみがえってきました。土日も休まずに独学で経理を学んだという面接官はそのことに自信を持っていて、自分の仕事にプライドをもって取り組んでいたのだと思います。それを私が「誰にでもできる仕事」だと言ってしまったからあんな態度になったのだろうと気が付きました。非常に腹の立つ人間でしたが、言っていることは正論だったと思います。大学も中退していて、転職を繰り返しているようではブレてると思われても仕方がない。確かにその通りだと思いました。「ブレてる」という言葉は、私にとっては非常に大きなアドバイスになりました。自分が本当にやりたかったことは何か、改めて考えさせてくれたからです。私がやりたかったのは事務でも正社員の仕事でもなく、「シナリオ」の仕事でした。学生時代にあれだけ打ち込んで、事務の仕事を選んだのもシナリオの勉強と両立できるからという理由だったことを思い出したのです。それだけでも私にとっては大きな進歩でした。仕事に対する愛がなければどんなに言葉巧みに志望動機を語っても相手には響かないのです。ですがシナリオの仕事には経験が必須となります。でもシナリオの仕事は無理でも文章を書く仕事ならできるかもしれないと思い立ち、「コピーライター」という仕事に応募してみることにしました。幸い最初に希望していた条件にも近く、何よりも文章を書く仕事ということに魅力を感じての応募でした。面接ではきちんと自分の思いを伝えることができ、採用してもらえることが決まりました。こうして私の転職活動は無事終わりました。結局就職できたのは8月のことで、4か月間も費やした後の結果でした。このようにたった一つの方向転換でことが上手く進み、しかも諦めかけていた夢に一歩近づくことができたのです。あのときあの面接官に「ブレてる」と言われなければ、私はまだ事務の仕事を探していたかもしれません。凄く腹の立つ面接官でしたが、今ではとても感謝しています。

終わってから気付いた事

まず私は転職に関しての考えが根本的に間違っていたことに気が付きました。転職はそんなに甘いものではないという事、失業者が予想以上に多いという事、派遣だからといってすぐに仕事が決まるわけではないという事など、転職活動中に身に着けた教訓は数多くあります。また、面接官はその道のプロです。自分の軸をしっかり作ってから面接に挑まなければ、仕事への情熱ややる気が乏しいことはすぐに見抜かれてしまいます。ですから、転職を考える際には必ず、自分は本当は何がしたいのか、人生の目的は何かを考えて挑むようにしましょう。私は運よく面接官にそのことを指摘してもらい、天職につくことができましたが、ほとんどの面接官はそこまでのことは言ってくれません。いかに自分で気付くかが大切なのです。それから、私は一人ですべての転職活動を行っていましたが、私より早くに転職を成功させた友人に話を聞いたところ、彼女はハローワークの職員に随分助けてもらったとのことでした。私はハローワークでは職業相談しか利用していなかったのですが、ハローワークには面接練習をしてくれるサービスや履歴書の添削指導のサービスなどもあり、それを最大限に活用したとのことでした。ハローワークの方々はとても親身に相談に乗ってくれ、そのおかげで転職活動で落ち込むことも少なかったのだそうです。人に愚痴を聞いてもらうだけで心が軽くなることもあります。今転職活動中で、大きな壁に行く手を阻まれている人がいたら、そういったサービスを活用することをおすすめします。一人で抱え込んでしまうと正しい道が見えなくなってしまい、私のように遠回りすることになりかねません。助けてくれる人には甘えることも大切です。

サイトタイトル